家庭経済について

Q1:家庭経済を設計するに当たり、留意することは何ですか?

 ライフプランの3つの要素(生きがい、健康づくり、家庭経済)のなかで、家庭経済の設計は、健康づくりと並んで日常生活を支える基盤といえます。
 家庭経済の設計にあたっては、次の2点に留意する必要があります。
 ①長期的な視点で考えること
 在職中の生活に引き続き、退職後も経済的に安定した生活ができるよう、長期的な視野に立って計画することが必要です。
 ②人生観や価値観を反映させていくこと
 自分自身の人生は、他人から与えられるものではなく、自分自身が作り出していくものです。したがって、家庭経済の設計も各人各様であり、常に自分自身はどうか、わが家の場合はどうか、という視点に立って計画していく必要があります。

Q2:家庭経済を設計する必要性は何ですか?

① 豊かでゆとりのある生活を送るために
 家庭経済設計は、健康とならんで日常生活を支える生活の基盤づくりといえます。豊かでゆとりある生活をしていくためには、経済的な基盤がしっかりしていなければなりません。
 経済的にゆとりがあっても幸せであるとは限りませんが、最低限の生活費も厳しいというのでは困ります。
② 公的年金の不安への対応
 少子・高齢化によって、高齢者が増え、若年層が減る人口構成は、公的年金制度に大きな影響を与えています。
 公的年金制度は、若年層が制度を支え、高齢者に給付を提供する世代間扶養の考え方で成り立っていますが、少子化の進展は制度を支える人の減少となり、高齢化の進行は受給者の増加を意味します。
 国では、将来世代の保険料が過重な負担とならないようにするとともに、確実な年金給付を保障することを目的として、平成6年に引き続き平成12年にも公的年金制度の改正を行いました。
 さらに平成16年改正では、将来にわたって制度維持が可能となるよう、保険料の引き上げと給付を抑制する仕組みが導入されました。
 公的年金は、あくまでも老後生活のベースとなるものですが、ゆとりある退職後の生活を実現するためには、公的年金にすべて依存するというのでなく、公的年金をベースに個人年金や財形貯蓄など、自助努力による老後生活の基盤づくりを早い時期から行う必要があります。

Q3:家庭経済の設計はどういう手順でやればよいですか?

家庭経済設計は、以下のような手順で考えていきましょう。
 ①テーマ・目標をはっきりさせる
 ②わが家の経済状況を把握する
 ③将来の経済状況を予測する

① テーマ・目標をはっきりさせるためには「あなたが今、大切なこと」を洗い出し、その中で、特に「実現させたいことは何か、やらなければならないことは何か」を自分の中で明確にしていきます。
② 次に①で明確にしたテーマが家庭経済に照らし合わせて実現可能かどうかをチェックします。そのためには、「わが家の家庭経済の現状」を把握する必要があります。収入の状況、支出の状況、そして貯蓄や借入の状況などがどうなっているか確認しましょう。


③ 仕上げは、将来の家庭経済予測していくことになります。「ライフプラン計画表」を使えば、家庭経済の状況が10年後あるいは15年後にどのように変化していくのかがつかめ、最終的にテーマや目標が実現可能かどうか確認できます。 もし、その実現が家庭経済上難しいのであれば、優先順位をつけたり費用面での節約をはかったり、時期の先送りなどを検討し、何度も納得のいくまでプランを練り直してみることが肝要です。

Q4:なぜ収入は「手取り」で考えたほうがよいのでしょうか?

 「あなたの年収は」と聞かれたらどのように答えますか。一般的には源泉徴収票を見て、「支払金額」欄に載っている金額を答えることが多いのではないでしょうか。しかしこの金額には、税金や社会保険料が含まれています。
 税金や社会保険料は、生活して行く以上絶対に支払わなければならないものであり、自分では決して使うことができないものです。
 将来にわたって収支バランスを検討するためには、まず、収入がいくらなのかつかむことが基本となります。その際、収入はあくまでも自分で使えるものとしないと意味がありません。前述の税金・社会保険料が含まれた収入をベースに考えてしまうと、実際に使えないものまでを見込んで支出を見積もっていることになり、適切なプランが作成できません。
 なお、給与天引きで生命保険や財形貯蓄の積立などに加入している場合の保険料等については、給与明細上はすでに引き去りがされているため手取りという実感が持ちにくいかもしれませんが、税金等と違い任意に加入しているものですので、ここでいう手取り年収には含まれることになります。

Q5:定年退職後の収入確保のために、準備しておきたいのですが、私的年金にはどんなものがありますか?

 老後における年金のために行う積立貯蓄には、財形年金や個人年金などがあります。どちらも、在職中に払い込んだ掛金や保険料を原資として、契約時に設定した年齢以降に毎年の年金を受け取るものです。
 財形年金は、勤労者財産形成促進法(財形法)に基づいた非課税の貯蓄制度です。勤務先が金融機関と契約していないと利用できませんので、注意が必要です。

財形年金の概要
項目 説     明
加入資格 55歳未満の勤労者
積み立て 5年以上、毎年定期的に積み立てます
積立限度額 財形住宅と合算して元利合計550万円まで(生命保険会社が扱う保険型は、払込保険料385万円まで)
給付 満60歳以降に5年以上20年以内(生命保険会社は終身年金もあり)の年金で受け取ります
課税 ・受け取る年金は非課税です
・積立期間中にやむを得ず解約して積立金を受け取る場合は、ペナルティ(過去にさかのぼって利息に課税)があります。

 個人年金は、個人が生命保険会社などと契約するものです。個人の生活設計に合わせて保険料払込期間、据置期間、年金の受取額、受取期間などを決定できるのが特徴で、いわばオーダーメイドの年金といえます。
 個人年金の保険料は、適格要件を満たしていることを条件に、年末調整等で一般の生命保険料とは別に、所得税で最高5万円、住民税で最高3.5万円の個人年金保険料控除を受けることができます。

個人年金の概要
 項目  説     明
年金の型 定額型 基本年金額が毎年一定であるもの
逓増型 基本年金額が毎年あるいは一定期間ごとに増えていくもの
受取方法 終身年金 ・年金の支給開始後、被保険者(=年金受取人)が生存している限り、一生涯にわたって年金が受け取れるもの
・一般には年金の支給開始後10年、15年などと定められた保証期間中は、被保険者の生死にかかわらず年金が受け取れる「保障期間付終身年金」が多い
有期年金 年金の支給開始後10年、15年などとあらかじめ定められた期間中は、被保険者が生存している限り年金を受け取れるもの
確定年金 年金の支給開始後10年、15年などとあらかじめ定められた期間中は、被保険者の生死にかかわらず年金を受け取れるもの

  • 個人年金保険料控除を受けることができる適格要件
    • 保険料を拠出する人もしくはその配偶者が年金の受取人であること
    • 保険料の払込期間が、10年以上であること
    • 年金の給付を目的とするもの(年金以外は脱退一時金及び遺族一時金に限られる)
    • 確定年金で受け取る場合は、受取開始年齢が60歳以上で、かつ年金受取期間が10年以上であること(終身年金は、特に制限はない)
    • 年金の支払は、年1回以上定期的に行い、かつ一部一時払の定めのない契約であることなど

    ※毎年受け取る年金は雑所得となり、他の所得と合算され所得税・住民税の対象となります。

    Q6:マイホームを持つ予定ですが、資金計画や返済のポイントを教えてください。

    まず、諸費用を含めた総費用を洗い出しましょう。土地の代金やマイホーム建設の直接工事費のほかにも、外構や植栽、上下水道を整備する場合など別途工事にかかる費用や、税金・登記費用などの手続にかかる諸費用も忘れずに計算します。また、マンションならば購入物件の売買価格のほかに修繕積立金などもかかります。
     住宅購入の場合の購入計画は、これらの諸費用を含めた総費用ももれなくつかむことからはじまるといえます。
     住宅ローンを組む前には、少なくとも総費用の20%できれば30%の頭金を用意しましょう。またローンは「いくら借りられるかでなく、いくらなら返せるか」を考えることが必要です。
     さらに、どのくらいの年数でローンを払い終えたいかということもポイントの一つです。遅くとも定年までにローンを払い終えるように考えておけば、老後生活に余裕が持てます。

    Q7:住宅購入で親から資金援助を受けた場合、贈与税はどうなりますか?

    個人から年間110万円を超える財産をもらった場合、もらった個人が負担する税金が「贈与税」です。
     贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、一定の要件を満たす場合には、「相続時精算課税」を選択することができます。
     さらに、「相続時精算課税」では、その資金援助が住宅取得を目的とする場合には、下記のような特例措置があります。

    住宅取得等資金の贈与に係る相続時精算課税選択の特例

     3,500万円の特別控除額(特別控除額2,500万円+住宅資金特別控除額1,000万円。限度額まで複数年にわたって使用可能です。)の範囲内の贈与であれば贈与税はかかりません。これを超える部分については税率20%で贈与税が課税されます。
     なお、一度この制度を選択すると、その後同じ贈与者からの贈与について「暦年課税」の適用を受けることができません。
    ※ この制度は贈与を受ける子ども(20歳以上に限る)各自が、贈与者である父、母ごとに精算課税制度を適用するかどうか選択できます。資金贈与を受ける時点では上記の範囲で贈与税が軽減され、相続発生時点で本来の相続財産にそれまでの贈与財産を含めて相続税を計算し、すでに納めた贈与税との精算(納付または還付)する制度です。

    ・この特例は、平成21年12月31日までに住宅取得等資金の贈与を受けた場合に適用します。
    ・特例の適用を受けるためには税務署への申告が必要です。
    ・上記以外にも細かい適用要件がありますので、適用を受けようと思われる方は事前に税務署や税理士にご相談ください。

    Q8:子どもの教育費は毎年どれくらいお金がかかりますか?

     子どもの教育費は、支出する時期が決まっており、しかも金額が大きく、節約が難しい資金といえます。
     たとえば、幼稚園から大学(文系・自宅通学)まですべて国公立に進んだ場合でも約1,000万円。幼稚園から大学(理系・自宅外通学)まですべて私立に進んだ場合は、実に約2,500万円も必要になります。
     平成19年7月に国民生活金融公庫が国の教育ローンを利用した勤労者世帯に対し教育費負担の実態について調査したところ、世帯の年収に対する在学費用(小学校以上に在学中のすべての子どもにかかる教育費用の合計)の割合は33.6%と、年収のおよそ3分の1近くを占めているという結果でした。
     そのなかでも、自宅外通学者がいる世帯は40.3%に上り、自宅外通学を始めるための費用や、年間の仕送り額が家庭経済に占める負担が高くなっています。また、教育費捻出のため、旅行・レジャーや外食費といった教育費以外の支出を削っている家庭が全世帯の6割近くあります。
     子どものいる家庭にとって、教育費はかなりの負担となっており、特に大学入学に向けては、周到に準備しておく必要があります。

    【一人当たりの年間教育費】

    幼稚園~高校 (単位:万円)
       公 立  私  立
     1年次  2年次以降
    幼稚園 25 55 50
    小学校 35 140 120
    中学校 50 125 110
    高校 55 110 95

    大学 (単位:万円)
      大  学  短 大   専門学校 
     国公立  私立
     (文系) 
    私立
     (理系) 
    私立
    (医歯系)
    自宅 1年次 150 180 215 575 180 190
    2年次以降 70 105 140 425 105 120
    下宿 1年次 310 345 375 735 340 350
    2年次以降 150 185 215 505 180 195

     ※下記の費用内訳に基づいて計算した結果を5万円単位で表示しています。
    ・大学、短大、専門学校自宅の場合は、小遣いの平均18.7万円を反映させています。
    ・大学、短大、専門学校下宿の場合は、年間仕送り額の平均95.9万円を反映させています。
    ・大学、短大、専門学校1年次は大学進学前にかかる費用と学校納付金等を反映させています。
    ・大学、短大、専門学校2年次以降の費用は学校納付金等から入学金を引いたものを反映させています。

    出典:文部科学省「子どもの学習費調査」(平成18年)、こづかいは金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(平成20年)、全国大学生活協同組合連合会「キャンパスライフデータ」(平成20年)、文部科学省「私立高等学校等の生徒等納付金平均額調査」(平成20年)、「私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額調査」(平成19年)、(社)東京都専修各種学校協会「学生納付金調査」(平成20年)

    Q9:「子ども保険」を検討していますが、どのような商品がありますか?

    「こども保険」は「学資保険」とも呼ばれ、主に生命保険会社や郵便局で取り扱っています。商品によって違いはあるものの、一般的には教育資金の積み立てを重視し、満期保険金(一般に17歳~22歳で設定)や、進学時期(12歳、15歳、18歳など)に祝い金が支払われるものが主流です。

     その他、契約者である親が死亡した場合に育英年金が支払われるものや、子ども自身の死亡保障や医療保障を特約として組み合わせたものもあります。
     いずれの型にも共通していることは、契約者が亡くなった場合には以後の保険料が免除され、満期保険金や祝い金は予定通り受け取れる点です。
     なお、予定利率の低下により大半のこども保険において受取金総額が払込保険料総額を下回る元本割れが見られます。保険商品を貯蓄商品として利用する場合には、保険期間と同期間の他の金融商品と比較検討して、保険商品を選ぶ意味を考えることが必要です。

    Q10:老後には、どれくらいお金がかかりますか?

     例えば、60歳で定年退職後の25年間、夫婦二人で月間35万円の生活費が必要であるとすると、

      35万円×12ヶ月×25年=約1億500万円

    の老後資金が必要になります。
     夫の共済年金を年額200万円、専業主婦である妻の老齢基礎年金を80万円とすると、世帯の年金は年額280万円となり、25年間の受取総額は7,000万円です。差額の3,500万円から、退職手当など勤務先で準備済みの資金を差し引いたものが、自助努力で準備したい資金です。
     仮に2,000万円の退職手当が支給される予定の人は、自助努力で準備したい資金は約1,500万円です。夫婦とも共済年金に加入している世帯では、異なったプランニングとなるでしょう。
     このように、老後生活に必要な月間ベースのイメージを持ち、公的年金や退職手当を考慮しながら、自助努力による準備の計画を立てることは非常に重要です。

    Q11:年代別の家庭経済管理のポイントは何ですか?

    ◆30歳代
     収入も少ない時期ですが、教育費用や住宅費用などの大型の生活課題が発生する前ですので、この時期に将来発生することが予想される生活課題に向けてしっかり貯蓄をしておくことが大切です。独身者の場合には、自分自身の結婚費用についても準備する必要があります。この時期に、収入の範囲内で生活していくパターンを確立しておくとともに、収入の一定割合を貯蓄に回す習慣を身につけておきましょう。

    ◆40歳代
     教育費用、住宅ローンなど生活課題が盛りだくさんであり、一生のうちで家庭経済の状況が最も苦しい時期です。生活課題に優先順位をつけて対応策を検討しましょう。
    ①計画的な準備の必要な支出は何か確認しましょう。(教育費用、住宅費用、趣味・レジャー費用など)②この時期は、給与収入だけではすべての生活課題をまかないきれないため、調達手段にはどのようなものがあるか調べましょう。(預貯金、各種ローン、奨学金など)③さらに、より有利な調達手段はないか調べてみましょう。(団体の福利厚生制度、公的融資など)

    ◆50歳代
    ①借入金の整理
     子どもが独立し教育費用の負担がなくなると、家庭経済にはだいぶ余裕ができます。ライフプラン計画表を作成した上でこの先大きな支出がないようであれば、積極的に借入金を整理していきましょう。これは地方公務員の特長ですが、民間のサラリーマンのように会社が倒産したときに備えての当座の生活費を確保しておく必要性は低いので、急にお金が必要な場合の最低限の一時金を除いて、早めに借入金の返済へ充当した方がよいでしょう。借入金の返済を早めに終えたら、そこから貯蓄をはじめればよいのです。住宅ローンの残っている方はこのタイミングで繰上げ返済等を検討するとよいでしょう。
    ②保険の見直し
     子どもが独立したら、死亡保障中心から、医療保障や介護保障そして年金など自分と配偶者の「長生き」に備える保障へのシフトを考えることが必要です。よく検討した上で最適な保険に加入しているかどうか、現在の加入状況を点検してみましょう。
    ③資産運用
     子どもが独立してから定年を迎えるまでの期間が、貯蓄のできる最後のチャンスといわれています。定年までの明確な貯蓄目標を立て、継続的に貯蓄していくことが必要です。

    ◆60歳代以降
    ①定年前後の変化
     退職をはさみ、その前後では家庭経済において様々な変化が起こります。収入のダウンはもちろんですが、その他にも次のような変化があります。まずは、変化に早く慣れることが大切です。
    ・収入サイクルが変わる
     在職中は毎月給料が支給されますが、退職共済年金の受給は2ヶ月に1回です。この隔月のサイクルに慣れるまでは、銀行口座の残高不足により、公共料金の引落しができないといった事態が生じることがあります。
    ・ボーナスがなくなる
     一般的に毎月決まってかかる出費は給料でまかない、突然の出費や大型支出はボーナスでといった使い分けをしている家庭が多いのではないでしょうか。退職後はボーナスがなくなりますので、例えば大型家電の故障等、突然の出費に対する予備資金を別途確保しておく必要があります。
    ・年末調整がなくなる
     在職中は特別な場合を除いて年末調整により納税が終了しましたが、退職後は毎年確定申告をしなくてはなりません。
    ・健康保険が変わる
     退職すると共済組合員としての資格を失うことになります。国民皆保険制度に基づき、退職後もいずれかの保険制度に加入しなければなりません。国民健康保険に加入する場合は、保険料が毎年の所得を基準として計算されるため、退職の翌年は高めの保険料となりますので注意が必要です。まず任意継続(2年以内)をして、その後に国民健康保険に切り替えると負担面からは有利であるといえます。
    ②退職手当の運用と管理
     退職手当をどう運用するかも重要な問題です。運用を考える際には、多くの金融商品の中で何を選ぶかが大切になります。また、世間では退職手当を狙った様々な手口の悪徳商法があり、少しでもゆとりある生活を送りたいと願う退職者の心理を巧みに突いてきます。利殖ばかりに気を取られていると、それらの手口にだまされやすいので十分に注意することが必要です。
    ③保障の点検
     医療保障や介護保障など、自分と配偶者の「長生き」に備える保障へきちんとシフトできているかどうか、現在の加入状況を再度点検してみることが必要です。

    Q12:現在30代ですが、家庭経済設計が必要であると言われても、もう少し年齢がたってからで構わないのではないでしょうか?

     一口に若い世代といっても、既婚者と未婚者によって家庭経済設計の考え方は大きく違います。また、同じ既婚者であっても、子どもの有無やマイホームの有無によって生活課題は変わってきます。しかし、これらの生活課題に対して計画も立てずに日々の生活を送っていたのでは、浪費を積み重ねることになってしまったり、まとまった資金が必要になった時にその準備ができていないということになりかねません。
     各年代には、それぞれ違った生活課題があります。若い世代の代表的な生活課題としては結婚・出産・育児等があり、働き盛りの40~50歳代では住宅ローンとともに教育費もピークを迎えます。50歳代の後半では退職後を見据えた老後生活資金をどうするかが切実な問題といえます。
     30歳になられた今、住宅資金や教育資金の準備をはじめるべき時期です。これらの資金は必ず用意をしなければならないものであるとともに、支出額が大きく準備に長期間かかるため早い時期から準備をしておく必要があります。
     家庭経済設計は、年齢に関わらずできるだけ早いうちからはじめることが肝要であり、実現可能な計画ができたら、その計画に沿って実行していくことが大切です。そして、少なくとも年1回は計画の進捗状況を確認し、目標達成に向けより実効性を高めていくことも必要でしょう。

    Q13:住宅ローンの基本と組み方について教えてください

     住宅ローンを設計する上で重要なことは、いくら借りられるかということではなく、「いくらなら返済できるのか」、ということです。すなわち、自分の年収、住宅にかかるランニングコスト、日常の生活状況、老後生活設計を含めた今後のライフプランなどを総合的に勘案して、どの程度の住宅ローンなら無理なく返済できるのかを検討すべきです。過大な住宅ローンとなって、レジャー資金が不足して生活にゆとりがなくなったり、教育資金や老後資金の準備に支障がでたり、住宅ローンの返済が延滞しないよう、充分に留意する必要があります。
     各人の状況によりますが、一般的に無理のない返済額は、手取年収(年収から所得税、住民税、社会保険料を差し引いた金額)の25%以内、できれば20%以内といわれています。

    Q14:住宅ローンの見直しに関して、「繰上げ返済」と「借換え」について教えてください

    住宅ローンを設計する上で重要なことは、住宅ローンは定期的に見直すことにより、金利の負担を減少させることができます。
    ①繰上げ返済
    元金の一部又は全部を余裕資金でまとめて返済するものです。「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つの方法があります。いずれも利息の軽減効果がありますが、同じ借り入れ条件で、繰上げ返済の時期、金額とも同じ場合、期間短縮型の方が利息の軽減効果は大きくなります。なお、繰上げ返済を行う場合、一般的には手数料がかかります。
    ・期間短縮型…返済額はそのままにして返済期間を短縮させる方法です。定年退職後も続くローンを組んだ場合に、退職前に返済を終了させたいときに有効です。
    ・返済額軽減型…返済期間をそのままにして返済額を軽減する方法です。子どもの教育資金がかさんで返済額を軽減したいときに有効です。
    ②借り換え
    金利の高い住宅ローンの返済途中において、金利の低い住宅ローンに借り換えて、金利の負担を軽くする方法です。公的融資や独立行政法人住宅金融支援機構の証券化ローン(「フラット35」)に借り換えることはできず、民間の金融機関のローンに借り換えることになります。固定金利を変動金利に借り換えれば、金利の上昇リスクを抱えることになります。
    団体信用生命保険への加入が義務づけられていますので、健康状態によっては借り換えができないケースもあります。また新規のローンを組むことになるため、ローンを組む際の手数料・税金などのコストがかかることに留意することが必要です。